● 今回の下落は、米国経済の減速を背景としたマクロ主導の調整であり、突発的な暴落ではない。
● 売りはレバレッジ解消に加え、米国投資家の現物需要低下が重なって発生している。
● 反発余地はあるが、底は価格ではなく売り圧力の枯渇で決まる。
現在の暗号資産市場では、著名な分析家の見通しがほぼ例外なく弱気に傾いている。添付の Analyst Consensus Index が示す通り、強気予想は姿を消し、市場全体が悲観一色に染まっている。ビットコインが60,000ドル台まで下落した背景は、「理由なき暴落」ではない。実際には、米国経済の減速が段階的に織り込まれた結果だ。
まず、雇用市場に明確な亀裂が入っている。1月の人員削減は10万人を超え、2009年以来の高水準となった。一方でJOLTS求人件数は予想を大きく下回り、2023年以来の低水準に落ち込んでいる。採用が止まり、解雇が増えるという組み合わせは、消費減速の典型的な前兆だ。
次に、テック信用市場のストレスが表面化している。テック向けローンのディストレス比率は約14.5%と2022年以来の水準に達し、テック債のディストレス比率も約9.5%まで上昇した。高金利環境の長期化により、多くの企業が債務返済に苦しんでいる。
住宅市場も崩れ始めている。売り手が買い手を約53万人上回り、その乖離は過去最大となった。住宅は雇用・消費・信用をつなぐ景気の中核であり、ここが減速すれば波及効果は避けられない。
それでもFRBは明確な緩和に踏み切っていない。景気減速が進む一方で利下げは停止し、流動性は増えないままストレスだけが残っている。債券市場も警告を発しており、米2年−10年金利差は4年ぶりの高水準へとベア・スティープ化している。これは歴史的にリセッション前に起きやすい動きだ。
これらをつなぎ合わせると、市場が売られている理由は明確になる。解雇増加、採用減少、企業債務ストレス、住宅需要低迷、FRBのタカ派姿勢、そして債券市場の警告。市場は米国経済の減速とリセッション接近を織り込み始めている。
ビットコイン特有の視点では、売り圧力の多くがCoinbase経由で出ている点が重要だ。これは米国投資家の現物需要が弱く、むしろ売却が優勢になっていることを示す。今回の下落は、レバレッジ解消だけでなく、米国主導の現物フロー悪化が重なっている。 暗号資産の恐怖指数は11まで低下し、心理とポジションが価格に先行して崩れている。誰も強気を語らず、恐怖だけが残る局面だ。
エックスウィンリサーチは1月1日の時点で、金融政策と実体経済のねじれが生むレンジ相場、もしくはマクロショックによる深押しというシナリオを想定していた。現在の市場は、その中でもマクロショック側に一歩踏み込んだ状態にある。
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短期的なリリーフラリーは十分に想定される。極端なオーバーソールド水準、センチメントの崩壊、ポジションの整理が進んだ局面では、需給だけで価格が跳ね返る場面は過去何度も見られてきた。今回も、ショートカバーや短期筋の戻り買いによって、急反発が起きても不思議ではない。
ただし、その反発は「底打ちの証明」にはならない可能性が高い。多くの場合、最初の反発は、売りが止まったことを示すだけで、新たな買い需要が入ったことを意味しない。出来高が伴わず、現物フローが改善しないままの上昇は、単なるポジション調整に過ぎないケースが多い。
本当の底は、価格が下がらなくなったときではなく、「売りたい主体がいなくなったとき」に形成される。出来高と清算が同時に噴き上がった後、市場参加者が疲弊し、強気も弱気も語られなくなる。ニュースのヘッドラインから暗号資産が消え、相場への関心そのものが薄れたとき、構造的な底が静かに出来上がる。
その過程では、一度反発した後に、再び下値を試す動きが入る可能性も高い。反発局面で戻り売りが出るか、安値更新にもかかわらず下落の勢いが弱まるか。この「下げ方の変化」が確認できるかどうかが、底打ち判断の重要な分岐点になる。
現時点で重要なのは、反発幅を当てにいくことではない。現物フローが回復しているか、ETFや米国投資家の売却が止まっているか、売り主導の出来高が収縮しているか。こうした構造の変化が積み重なった先にしか、持続的な反転は存在しない。
いまは、反発を期待しながらも、底値を急がず、市場が「恐怖から無関心へ」移行するプロセスを冷静に見極める局面にある。価格ではなく、構造と需給の変化が、次のサイクルの起点を教えてくれる。
オンチェーン指標の見方
Analyst Consensus Index:100名を超えるグローバルの著名暗号資産アナリスト達の相場見通し(強気・中立・弱気)を集計し、市場センチメントの偏りを可視化した指標。強気・弱気の比率から、市場参加者の心理がどの方向に傾いているかを把握できる。極端に一方向へ偏った局面は、相場の転換点を示唆することが多い。
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